【出演】
おきわ :水谷八重子
伊之助:松村雄基
重善 :宮川 浩
又市 :田口 守
甚平 :青山哲也
おそめ:小川絵莉
【スタッフ】
作 :北條秀司
演 出:青井陽治
美 術:朝倉 摂
照 明:沢田祐二
邦 楽:堅田喜三代
効 果:SBS
演出助手:成瀬芳一
舞台監督:小柳津暁生
制 作:松本康男
:高橋夏樹
:本田景久
制作事務:桐ヶ谷香
製 作:松竹株式会社
2005年4月、水谷八重子主演による「あぢさゐ」
2006年1月、波乃久里子主演による「ふりだした雪」&「新春花くらべ」
シアター110での新派公演は、舞台で繰り広げられる情感あふれる台詞、わずかなしぐさに
こめられた奥深い情感、そこにこめられた人情の機微など、現代社会のなかでともすると忘れられがちな「日本の情緒」を再認識させられ、いずれも好評を博しました。
今や新派公演は、シアター1010を代表するシリーズとなっています。
そして今年7月の演目は、「狐狸狐狸ばなし」。北條秀司の名作喜劇を、青井陽治が演出します。
日本的情緒を大切にしながらも、シアター1010の劇場空間を活かした新鮮な演出で、
新派に新しい息吹を吹き込み、好評を博しています。
主演は、新派を支える水谷八重子。
共演は、今やシアター1010での新派公演に欠かせない存在となった松村雄基と「あぢさゐ」公演で好評を博した宮川浩です。
どうぞご期待ください!
【解説】
「狐狸狐狸ばなし」は、北條喜劇の最高作とされている。
昭和38年2月、東京宝塚劇場で初演された。
初演のメンバーは、おきわに山田五十鈴、伊之助に森繁久弥、又市に三木のり平、重善に17代目中村勘三郎だった。
新派公演では平成7年2月京都南座が初めてで、おきわに水谷良重(現2代目八重子)、伊之助に中村勘九郎(現18代目勘三郎)、重善に池畑慎之介という顔合わせだった。
本来、この芝居の背景は、北大阪の梅田村(今の大阪駅付近)から長良の川べりにかけた辺り
だったが、昭和54年4月、大阪中座での上演に際し、世界を江戸吉原田園、浅草、隅田川堤に
移し、伊之助を上方から流れてきた役者の果て、という設定に変え、肩書きに「江戸みやげ」と
付けて、江戸情緒のあふれる作品となった。
【あらすじ】
江戸の末期。江戸吉原田園の外れに住まいする伊之助(松村雄基)はかつて上方下りの女形。
千住で女郎をしていたおきわ(水谷八重子)と夫婦になり、今は手拭い職を営んでいる。
おきわは、昼日中から茶碗酒を浴びるほど飲むような女で、色の方でも裏手の閻魔堂の住職重善(宮川浩)と密通していた。伊之助はそれを知りながらおくびにも出さず、三度の食事から洗濯、
縫い物に至るまですべて女房の手を煩わさず自分でしていた。
おきわの方は、伊之助のことが身の毛がよだつほど嫌でたまらず、さらに重善が千住の物持ちの娘おそめ(小川絵里)に追い回されていることで、神経を余計に高ぶらせていた。
おきわが惚れているこの重善、これがまたとんでもない生臭坊主である。おきわが女房にしてくれと泣きつくと、それならあの蛇男を殺して来い、とうそぶいた。そう云われたおきわは翌日、伊之助の河豚鍋に手拭用の染粉を混ぜて飲ませた。伊之助はたちまち七転八倒の苦しみ…。
伊之助の葬儀で、おきわが毒殺の一件を打ち明けると重善は仰天した。葬儀が終わり、伊之助の雇人又市(田口守)と寺男の甚平(青山哲也)が千住の焼き場へ死骸を運ぶ事になったのだが…。