作 :エドモン・ロスタン
訳 :辰野 隆・鈴木信太郎
演出:鵜山 仁
【出 演】
シラノ・ド・ベルジュラック | 江守 徹 |
クリスチャン・ド・ヌーヴィレット | 浅野雅博 |
伯爵ド・ギッシュ | 菅生隆之 |
ラグノオ | 三木敏彦 |
ル・ブレ | 早坂直家 |
カルボン・ド・カステル・ジャルウ | 櫻井章喜 |
リニエール | 沢田冬樹 |
ド・ヴァルヴェエル | 石橋徹郎 |
モンフルウリイ | 城全能成 |
ベルローズ | 高瀬哲朗 |
キュイジイ | 鈴木弘秋 |
ブリッサイユ | 鍛冶直人 |
フランシス派の僧 | 今村俊一 |
うるさい男 | 清水圭吾 |
ガスコンの青年隊 | 神野崇 星智也 上川路啓志
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近衛銃騎兵 | 石川武 |
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ロクサアヌ | 高橋礼恵 |
教妹マルト | 太刀川亞希 |
リイズ | 頼経明子 |
教妹クレエル | 瀧田陶子 |
腰元/教母マルグリット・ド・ジェズュ | 玉井碧 |
【スタッフ】
装 置:倉本政典
照 明:金 英秀
音 楽:池辺晋一郎
音響効果:望月 勲
衣 裳:宮本宣子
アクション:渥美 博
舞台監督:寺田 修
演 出 補:北 則昭
制 作:伊藤正道
票 券:松田みず穂
【公演にあたって】
2007年(平成19年)は、文学座にとって創立70周年の記念すべき年になります。
1937年(昭和12年)9月6日に産声を上げた文学座。その記念公演の第一弾として
『シラノ・ド・ベルジュラック』を上演致します。『シラノ・ド・ベルジュラック』は言うまでもなく、
エドモン・ロスタンの戯曲作品として遍く知られている作品です。
17世紀に生きた実在の人物シラノ・ド・ベルジュラックを主人公に描かれた戯曲『シラノ・ド・ベル
ジュラック』は、1897年12月27日、パリのポルト・サン・マルタン座に於いて歴史的な初演を迎え
ました。それから119年の月日が経過し、文学座も記念の年に『シラノ・ド・ベルジュラック』を上演す
るわけですが、この作品自体も文学座にとっては記念碑的作品と言っても過言ではありません。
文学座が『シラノ・ド・ベルジュラック』を初めて上演したのは1951年(昭和26年)。
辰野隆、鈴木信太郎の共訳で、演出は長岡輝子、戌井市郎でした。シラノに三津田健、ロクサアヌ
に杉村春子(後半の続演は丹阿弥谷津子)、クリスチャンに大泉滉を配し、全幕通しでの上演
でした。会場は三越劇場、一ヶ月を超える公演で、ステージ数は54回、29000余名の観客動員の
記録が残されています。この全幕通し公演は、このような形態をとったものとして本邦初演でした。
以後、1955年(昭和30年)に東横ホールで再演されており、この時のクリスチャンは仲谷昇。
1967年(昭和42年)、文学座創立30周年には、演出に木村光一、安堂信也。シラノに三津田健と
北村和夫、ロクサーヌに杉村春子と小川真由美、クリスチャンに細川俊之という布陣で国立劇場
小劇場、渋谷公会堂で37回の公演に挑んでいます。
さらに16年の後、いよいよ江守シラノの登場です。1983年(昭和58年)、演出は藤原新平。
シラノに江守徹、ロクサアヌに平淑恵、クリスチャンに大出俊という配役でした。
そして、江守徹にとって23年ぶり。
一世一代の《シラノ・ド・ベルジュラック》がいよいよ今秋に迫ってまいりました。
文学座創立70周年記念公演第一弾『シラノ・ド・ベルジュラック』にご期待下さい。
【あらすじ】
17世紀のフランス。ガスコン青年隊のシラノ・ド・ベルジュラックは詩人で理学者で剣客で、
豊かな才能と強い正義感をもった武勇として誉れも高かったが、生まれついての容姿である偉大
な醜い鼻ゆえに従妹のロクサアヌへの恋心をじっと胸の奥に押し隠している。
ロクサアヌはシラノと同じ青年隊に入ったばかりの若き精鋭でかつ美男子のクリスチャンを想い、
シラノに恋の相談をもちかける。同じくしてクリスチャンもまたロクサアヌに想いを寄せており、
シラノは心ならずも二人の恋の仲裁役をつとめることになる。口下手で文才のないクリスチャンに
代わり恋文を代筆し、告白まで後ろ盾するシラノは同時に自分のロクサアヌへの想いをクリスチャ
ンを通して語らせているのであった。やがてシラノの尽力が功を奏してふたりは結婚するが、
宿敵ド・ギッシュ伯爵の策略によりシラノをはじめとするクリスチャンらガスコン青年隊は戦場送りと
なってしまう。しかし戦場に訪ねてきたロクサアヌの目前で夫、クリスチャンが敵弾に倒れてしまう。
15年の歳月が流れ、夫を失ったロクサアヌは修道院で暮らしており毎週土曜日ごとに訪ねてくる
シラノとの面会だけを楽しみにしていた。しかしある日、頭に傷を負った姿で現れたシラノは
クリスチャンの生前最後の手紙をロクサアヌに読み聞かせる。ロクサアヌはこの時初めて、
これまでの手紙の主が実はシラノであったことに気付く。だが瀕死のシラノはロクサアヌを前に
己の秘めた想いを決して告げることなく、最後の力を振り絞り勇姿をみせる。そして死はすぐ
そこまでシラノに近づいていた。
【シラノ・ド・ベルジュラックとは……】
実在のシラノ・ド・ベルジュラックは、1619年3月6日、パリのドゥ・ポルト街に生を受け、
1655年7月28日、従兄のピエェル・ド・シラノの家で36歳の生涯を閉じました。
ロスタンの作中でも描かれているように、頭に落ちてきた梁がもとで死んだとも、あるいはなんらか
の策謀により命を落としたとも言われていますがどちらにせよ、敵の多い波乱な人生であった
ようです。戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』に描かれているシラノと、実在のシラノとの間にどれだけ
の隔たりがあるのか定かではありませんが、作品を通してシラノという人物が魅力的に感じられる
とすれば作者ロスタンの創作力を讃えるべきでしょう。上述の墓碑銘のひとつひとつに刻まれる
魅力的な形容。シラノという人物はフランス人の心に長く忘れられていた存在でありながら、
その彼を掘り起こしたのはやはりエドモン・ロスタンの功績ということになりましょう。