【キャスト・スタッフ】
出 演:東儀秀樹 舘形比呂一 三田和代 (語り) 宮川安利(語り)
コロス:皆川まゆむ 風花美踊 林 真保 菊池いつか 三好麻沙美 土肥靖子
岡田桃園 藤原智美 渡辺由美 愛智伸江
演出・振付:上田 遙
音 楽:東儀秀樹 坂出雅海
プロデューサー:別府尚武
主 催:ニッポン放送/B.B.Productions
協 力:THEATRE 1010/矢島聰子事務所/コンボイハウス/ユニバーサルミュージック
【公演紹介】
「天と空と地」宇宙と生命の神秘。
今、蘇る鳳凰が語りかけるものは?
天から降りそそぐ光、美しき響きに満ちあふれた世界。
その光の音を奏でるもの、そしてその光の生命を舞うもの。
雅楽のプリンス 東儀秀樹と、ダンスのカリスマ 舘形比呂一。
究極のアーティストが出会い、ふれあい、ゆらぎ、
二人のカリスマが創り出す音と舞の美の世界に、
特別出演として女優 三田和代が加わり、さらなる世界を繰り広げます。
2006年3月東京国立博物館で初上演された「鳳凰伝説」装いも新に再演される。
【解 説】
「ダンススクエアー記事より」
東京国立博物館エキサイティング・ミュージアム Act.3
光降るファンタジー 「鳳凰伝説」
2006.3.25 東京国立博物館
東儀秀樹さんと舘形比呂一さんの夢の組み合わせによる「鳳凰伝説」
東京国立博物館の特別室はキャパシティが300人強(×5回公演)。チケットは発売と同時に完売、
オークションでも奪い合いだったのでしょうか。ファンとはまことに凄まじきもの、いえありがたいもの
です。そのため批評家諸氏の誰一人として招待券が発送されず、この「鳳凰伝説」を取材できたのは
カメラマンだけでした。"鳳凰"と聞いて私がイメージしたのは手塚治虫さん原作の
「火の鳥」でした。
永遠の命を求める時代の権力者が入り乱れ 不死鳥を追い求める壮大な宇宙ロマンなのですが、
描こうとしたのは"輪廻"それとも"永遠の愛"でしょうか。猿田彦という主人公らしき人物がいるので
すが、運命に翻弄される弱き人間像をこれでもかとばかり見せつけてくれます。はるか昔.....。
鳳・凰の誕生は同時でした。振付の上田遙さんは対極の存在として"鳳"と"凰"を捉え、〈火と水〉
〈静と動〉に描きます。(想像上の霊鳥"鳳凰"は 鳳は雄、凰は雌として別の存在に考えられていた
ようです。)笙を奏でる 東儀秀樹さんが静と水、ダンサー舘形比呂一さんが 火と動を担うかと思えば
そうではありません。水鏡のような静寂を漂わせていた 東儀さんが一転、嵐に転じまた静に戻る。
炎に身を焦がし己を消滅せしめようとする火の鳥を演じていた 舘形さんがコロスと同化したかの
ように無に帰する。瞬間、輪廻転生を感じないではいられません。「永遠の命が欲しい」と願う少女に
「今の命を大切にすることが次の命につながる」と諭す三田和代さん、自然の摂理 を説き・神意を
伝える"巫女"としての登場と解釈しました。 舘形さんは筋骨隆々とした素晴らしい肉体なのにミロの
ヴィーナスを思わせるやわらかな美しさを併せ持っています。客席には圧倒的に女性が多いのです
が、みつめる目が微笑みが「きれい!」と物語っていました。雅楽界のイケメン代表 東儀さんは
音楽家のはずなのですが、
「キング・リア」で見せた舞台人の貫禄にますます磨きがかかり、静かな
る存在感は並のダンサーでは到底かないそうもありません。時に愛し、時に憎む存在としての両者の
葛藤シーンは見ている方がつらくなるほど切なく美しいものでした。どちらが欠けても存在しえない
ことが解っているからこそ愛憎が増すのでしょうか。演者としての 東儀秀樹さんと舘形比呂一さんは
どちらも一流ゆえに認め合い戦っているようでした。【対極の出会い〜鳳と凰〜】を経て二人が退場
する際にやっと気づきました。自身の身体を捉えて離さない帯はまるでへその緒のように両者を
繋げていたのです。どちらかが母親?そんなはずはありません。お互いがお互いを憎みながら必要
とする悲喜劇を描くことによって渾然とした希望を私たちに感じさせたかったのではないでしょうか。
圧倒的な二人のカリスマがいるから成立した「鳳凰伝説」なのです。
2006.3.25所見 ダンス・スクエア 鈴木紳司