【キャスト】
石橋照男(予想屋30年 56歳) | ベンガル |
石橋理恵(石橋の娘・プログラマー 28歳) | 藤谷美紀 |
牧 チエミ(理恵の部下 23歳) | 山田まりや |
成田修二(石橋の弟子 26歳) | 大沢 健 |
原田陽子(編集者 39歳) | 星奈優里 |
大村泰造(飲み屋の主人 57歳) | でんでん |
酒井 亮(予想屋 45歳) | 小宮孝泰 |
眞山祥太郎(厩務員 65歳) | 三田村賢二 |
中村豊子(飲み屋の従業員) | 山本ふじこ |
瀬川(労務者風の老人) | うえだ 峻 |
徳永 | 鹿島信哉 |
若い男A | 堀本能礼 |
若い男B
| 山地健仁
|
立花敏之(健康雑誌出版社社長 53歳) | 上杉祥三 |
【スタッフ】
脚 本:水谷龍二
演 出:加納新平
美 術:松野 潤
照 明:五十嵐正夫
音 響:原島正治
衣 裳:山本皓子
ヘアメイク:山崎潤子
演出助手:渡邉さつき
舞台監督:武川喜俊
企 画:松本亘弘
プロデューサー:松野 潤
佐野葎子
制 作:彩崎 苺
企画・製作:オフィスイレブン
おふぃす佐野
主 催:株式会社足立コミュニティ・アーツ
【解 説】
2005年の大ヒット映画「ALLWAYS 三丁目の夕日」や昨秋封切されヒット中の「地下鉄(メトロ)に
乗って」など昭和30年代を舞台とする映画がノスタルジーを伴い大人の人々に受けています。
それは現代(いま)では失われてしまった人と人との優しい繋がりや穏やかな時間の流れ方に、
心を癒されていくからなのではないでしょうか。
脚本家水谷龍二の描き出す世界では、正に昭和30年代にタイムスリップしたかのような時間が
流れていきます。気忙しい社会から忘れ去られたように片隅で暮らす人々の日常生活をやさしいまなざしで描き出していきます。
「そのまま!」は、地方競馬場の偏屈な予想屋が、馬券を当てて倒産寸前の小さな出版会社を立て
直そうと夢見る社長に頼られてしまうことから騒動が始ります。
そんな中、予想屋の娘、弟子、馴染みの居酒屋の飲み友達や社長を支える人々が、さまざまな人間
模様を織り成していきます。どこか不器用にしか生きられない人々が肩寄せ合うように集まり、
お互いを気遣っている。それはなんとも微笑ましく、羨ましいとさえ思えます。
一人の予想屋と彼をめぐる人々の敗者復活の物語。
可笑しくて心が温まり、そして勇気をもらえるこの作品を、是非多くの方々にご覧頂きたいと思います。
【あらすじ】
中央競馬場から姿を消した競馬予想屋は今、地方競馬場で昔ながらの場立ち台に立ち、
仕事をしている。この芝居の舞台は神奈川にある架空の競馬場、川井競馬場である。
主人公の石橋照男(56)はこの道三十年のベテラン。
場立ち台"グッドラック"を構え、今日も客相手に独自の予想を展開している。
客の中にいかにも場違いといった感じの中年男が、石橋の予想を真剣に聞いている。立花敏之(53)
である。ひとつも当たらないとぼやきながら石橋の予想を買っていく。
破門した弟子・成田修二(26)も客に混じっていた。元ホストで見た目は今時の若者だが、どこか
他の奴と違うと思い弟子入りを許した。修二は石橋の期待に答えた。唯一気に入らなかったのは
女グセだ。石橋は競馬に集中しろと釘を刺したが、修二は石橋に隠れ女と付き合い始めた。
石橋は嘘をつかれたことに腹を立て、破門したのであった。破門をといてくれと懇願する修二。
聞き入れない石橋。そこに立花が、大穴を当てたと喜び勇んでくる。飲み屋に行こうと石橋を誘う
立花。少し離れたところから石橋を見ている若い女がいた。石橋の娘、理恵(28)である。
予想屋のたまり場でもある居酒屋「羽衣」で祝杯をあげる二人。主人の大村泰造(57)も大の競馬
ファン。話は盛り上がり、立花の仕事に話が及ぶ。名刺を見て驚く石橋。出版社の社長であった。
そこへ立花に呼び出された部下の原田陽子(39)が登場。実は立花の会社は倒産寸前。
明日までに三百万円用意しないと不渡りを出してしまう。立花はとんでもないことを言い出す。
「明日、一か八か勝負してみるよ」
開いた口が塞がらない陽子。だが、立花の勢いは止まらない。そこへ予想屋酒井、閉鎖された
地方競馬場の元厩務員真山、修二、修二についてきたギャル(チエミ)が加わり、店内は一気に
賑やかに。話の中心はやはり競馬。多額の赤字を抱え込み閉鎖に追い込まれた地方競馬の話で
ややしんみりしたところに理恵が入ってくる。
「課長!」酔ったチエミが思わず身分を明かしてしまう。
理恵はマーケットリサーチの仕事をしており、地方競馬の現状と将来性を調査していたのだ。
競馬に対するそれぞれの思いがぶつかる。「何もしらねえくせに、よく言うよ」修二が熱くなる。
「修二、帰って明日の全レースの予想を立ててみろ」
それまで沈黙していた石橋が言う。
「・・・・はい!」
修二は目を輝かせて店を飛び出した。
小さな公園に石橋と理恵。会うのは五年振りだった。
「明日報告書出すの・・・川井競馬場の。」
父を許せない娘。許してもらおうとも思わない父。とぎれとぎれの会話。
石橋の妻は脳梗塞で亡くなった。家庭や妻を一切顧みず、予想屋稼業に打ち込んできた石橋。
理恵はそんな父を許せなかったのだ。
「バカな人生を送ってしまったと思うときもあるよ。たかが馬の競走だよ、三十年だよ三十年・・・」
石橋つぶやく。
翌日の川井競馬場。当たりの来ない修二は客にヤジられながらも場立ち台に立ち、頑張って
いた。いよいよメインレースが始まる。石橋は自分の予想と修二の予想を照らし合わせてみる。
軸は一緒だが対抗が違っていた。
「それでいけ」と石橋は場立ち台を離れる。
立花は会社の運命がかかったレースを目の前にして青ざめていた。
「石橋さん、私、この勝負、あんたの予想に駆けてみたいんだ。ハズれてもあんたの予想だったら
悔いはない」
石橋はそっと紙に数字を書いて渡した。
京浜チャンピオンシップ、運命のレースが始まる。石橋が予想した馬がグングン追い上げてくる。
叫ぶ立花。
「そのまま!そのまま!」
演出のことば 加納新平
皆さんは、競馬の予想屋をご存じでしょうか?この作品は、一人の予想屋と彼をめぐる人々の敗者
復活の物語です。勝ち馬を予想し、競馬場内で客に売る予想屋は、競馬のプロ中のプロ。
中央競馬と地方競馬に分かれる日本の競馬界で、現在地方競馬にしかいません。かつて
怪物「ハイセイコー」(大井競馬場出身)を生み、最近では連敗続きで人気だった「ハルウララ」
(高知競馬場)がいるように、地方競馬にはさまざま馬が走っています。その馬の癖や能力、
騎手との相性まで分析し、予想して馬券を買わすのが予想屋の腕。
あてて当たり前、外せば罵声を浴びる中で、客の運命を口上一つで左右するのですから、
実に人間くさい仕事といえます。
さて、主人公・石橋は東京近郊の川井競馬場のベテラン予想屋。年のせいか、はたまた地方競馬
ジリ貧のご時世の影響なのか、最近スランプが続いています。
その石橋の前に、倒産寸前の健康雑誌出版社の社長・立花が現れます。金策にあぐね競馬場に
迷い込んだ立花は、石橋の予想で見事大穴を的中。が、ビギナーの彼は石橋の予想を間違った
買い方で買ってしまいました。プライドが傷つく石橋。
その立花は、借金を返すべく明日のメインレースに賭けた金全てをつぎ込んで、大勝負すると
言い出します。さあ、人生にくたびれかけたオヤジ二人の勝負の行方は如何に?
舞台に大型スクリーンを据え、競馬の迫力を存在に生かして、笑いと勇気をお届けする
喜劇「そのまま!」にご期待下さい。
主な演出作品
昭和52年度 放送文化基金賞 視聴者番組奨励賞
視聴者参加番組 「東京からおばんです」
平成3年度 文化庁芸術作品賞 ドラマ「のんのんばあとオレ」
原作 水木しげる
脚本 高橋国圀
出演 山田昌 岸部一徳 もたいまさこ 他
平成12年 第38回 ギャラクシー奨励賞 ドラマ「エイジ」
原作 重松 清
脚本 冨川元文
出演 田中 聖 中村雅俊 浅田美代子 他